PHR活用の課題を解消するPHR POCテンプレートとは?

 2021.06.29  デジタルトランスフォーメーションチャンネル

少子高齢化が加速し、国民の医療・介護に要する負担増などが懸念される中、健康寿命の延伸が社会的に喫緊の課題となっています。そこで本記事では個々人の健康管理や適切な医療の提供に役立つITソリューション「PHR」サービスの概要と、PHR活用の課題を解消する「PHR POCテンプレート」について解説します。

PHR活用の課題を解消するPHR POCテンプレートとは?

PHR(Personal Health Record)とは

PHRとは「Personal Health Record」の略語で、直訳すると「個人の健康記録」を意味します。PCRはその名の通り、患者個々人の健康・医療・介護に関する情報を統合的に収集し、一元的に保存するためのITソリューションです。PHRを活用することで、医療従事者は患者の健康状態や診療履歴などを効率的に把握でき、実際の治療はもちろん、病気予防などの観点からも活用できます。

PHRが求められる背景

現在、日本政府は少子高齢化に伴う人口の減少や社会保障費の負担増加などに備える施策として、「健康寿命」の延伸に取り組んでいます。健康寿命(Healthy life expectancy)とは世界保健機構(WHO)が提唱する概念で、簡単に言うと介護や通院などの必要がない、人生における健康な期間のことです。

個々人の人生の質(QOL)において健康がいかに重要かは多くの議論を要さないでしょう。社会的観点から見ても国民が健康であり続けることは、医療や介護などの現場において経済的・人的リソースの節減につながり、働き手の確保といった面から見ても非常に重要です。

PHRが収集する患者情報とは

先述したように、PHRでは患者個々人の医療・介護の記録など、健康に関する様々な情報を収集し、一元的に管理できます。たとえば病院や健康診断などにおける診療・診断記録を始め、常用している薬剤、体重の増減、日頃の食生活や運動習慣などの生活記録も含めて管理できるのです。

こうした記録は医療機関などがそれぞれPHRシステムに登録するほか、患者自身がスマートフォンで直接入力することによって収集されます。PHRを活用することで、医療機関は長期的かつ多角的な観点から患者の健康状態を把握することが可能です。とりわけ、生活習慣病に対する適切な治療や予防などに対して、こうした記録は有用といえるでしょう。

PHRの課題

上記のようにPHRは、患者の健康情報の効率的な収集と一元管理を可能にします。PHRが与える恩恵は、適切な医療の提供、ひいては健康寿命の延伸にも寄与するのです。とはいえ、PHRはまだ新しい取り組みであり、運用する際には以下のような課題が挙げられます。

情報提供に関する課題

PHRは個人の健康情報という、最も扱いを慎重にすべき個人情報を一元管理するものです。したがってそのシステム整備や運用においては、情報の扱いについて万全を期さなければなりません。たとえば、PHRに登録されたデータを誰がどこまで用いてよいかは、患者の明確な同意や厳密なガバナンスのもと、規定・運用されなければなりません。また、PHRに登録された患者データを、サイバー攻撃などから守るためのセキュリティシステムの構築や、その運用コストも大きな課題です。これは単純な技術的・経済的問題もさることながら、「誰が」PHRの主となるシステム提供者となり、コストを負担するのかといった問題も含みます。

普及率に関する懸念

PHRは個別の病院・介護施設などの垣根を超えて患者情報を一元管理してこそ、大きな効果を発揮します。逆に言えば、PHRを活用するためには患者がPHRアプリを使えるスマートフォンを所有していることを前提に、デジタル技術が業界で横断的に共有されなければなりません。とはいえ、PHRには業界で統一された規格がなく、一丸となって取り組むためにはまだまだ時間がかかることが予想されます。

PHR POCテンプレートとは

前項で説明したように、PHRサービスの展開には多くの課題が存在しますが、そのPHRの課題を解消し、利用を促進するために開発されたのが「PHR POCテンプレート」です。PHR POCテンプレートとは、PHRサービスのシステム準備を効率化するドキュメントおよびサンプルプログラムを意味します。続いては、このPHR POCテンプレートの特徴と活用事例について解説します。

PHR POCテンプレートの特徴

PHR POCテンプレートは、PHRに向けて最適化されたMicrosoft Azureベースのテンプレートです。PHR POCテンプレートはPHRの普及に不可欠な管理運用の標準化・相互運用性の確保のための足掛かりとして、Microsoft社とTISによって共同発表されました。

PHR POCテンプレートには、PHRの活用ケースをまとめた「業務ファンクションマップ」、PHRのシステム構成をまとめた「アーキテクチャマップ」、生活習慣病のひとつである糖尿病をモデルケースとした「サンプルプログラム」の3つで構成されています。ゼロからPHRシステムを構築し、サービスを開始するためには、プラットフォームの選定から始まり、アーキテクチャの設計、データ連携方式の検討、実際の機能設計と開発、主導による環境構築など、煩雑なプロセスが必要です。しかし、上記のようなPHR POCテンプレートを活用することによって、ユーザーはPHRにどのような情報が記録され、それを業務やサービスに活用していけばよいのか、手がかりが得られるでしょう。

これによって、ユーザーは先に挙げた対応事項に要するコスト/期間を削減し、スムーズにPHRサービスを始動させることが可能です。PHR POCテンプレートはPHRサービスを社会に普及することを目的として開発されたため、無償で公開されています。それゆえPHRサービスの導入を検討している企業なら誰でも活用できるのです。

PHR POCテンプレートの活用例

PHR POCテンプレートの活用例として、ここで宿泊療養者の健康情報管理を想定したユースケースを紹介しましょう。現在、一部の宿泊業者は政府の要請を受けて軽症/無症状の新型コロナウイルス感染者の宿泊療養を請け負っています。ここで紹介するユースケースは、こうした患者の療養期間における健康状態を管理することを目的に、PHR POCテンプレートで実装されたシステム活用例です。

このユースケースにおいて、PHRサービスの想定利用者は患者や看護師です。まず、患者はPCやスマートフォンなどによってPHRアプリに自分のアカウントを登録/照会します。そして定期的な計測などによって得られた体温やSpO2(酸素飽和度)、あるいは自身の体調に関するコメントなどのデータを入力します。

患者が入力したこれらのデータを、看護師がシステム上でチェックします。看護師はグラフなどで分かりやすく表示された諸々のデータを通して、個々の患者の健康状態を時系列的に把握し、改善が見られれば療養の終了、状態悪化など何か危険な兆候を見つけたら入院措置を取る、といった対応に当たれます。

以上が、宿泊療養者の健康管理を想定したユースケースです。このユースケースにおいて用いられたシステムの実装は、企画段階から数えておよそ10日で完了しました。このようにPHR POCテンプレートを活用することによって、健康情報を取り扱ったサービスを迅速に開始できるのです。

まとめ

本記事ではPHR活用の課題を解消するPHR POCテンプレートについて紹介しました。PHR POCテンプレートを活用することで、ユーザーはPHRサービスのスムーズな導入が可能です。PHR POCテンプレートによりPHRサービスの普及が今後さらに期待されるでしょう。

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